なぜ中小企業は人材不足なのか?原因と対策について解説

近年、中小企業の人材不足についてのニュースや新聞記事を見かける機会が増加し、今や人材課題は日本の中小企業が抱える慢性的な問題であると認識されています。
人材不足のこの時代を私たち中小企業はどうすれば乗り越えることが出来るのでしょうか。
本記事では、中小企業の人材不足の原因と対策について解説します。


目次

1.多くの中小企業が人材不足を課題と考えている実態


ニュースや新聞などで中小企業の人材不足が取り上げられる機会が近年増え、人材不足は周知の事実として認識されるようになりました。実際にどれだけの中小企業が人材不足を課題と感じているか、データで見てみましょう。

中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)から公開されている『中小企業・小規模企業者の人手不足への取組状況に関する調査(2023年) 』によると、調査回答者の3割強が人手不足の状況を深刻と捉え、6割強が重要または将来的な課題として認識しているという結果でした。
つまり約9割、ほとんどの企業が人材不足について深刻、または重大な課題と考えているということになります。今の日本にとっていかに人材不足がいかに深刻な状態にあるか、改めて痛感する結果となりました。

出典:中小機構『中小企業・小規模企業者の人手不足への取組状況に関する調査(2023年)


2.中小企業の人材不足の原因は何か?


そもそも、なぜ中小企業の人材不足が起こるのでしょうか。
人材不足の原因は様々ありますが、以下の4つの原因について解説します。

①人口減少


人材不足の原因一、つ目は人口減少による生産年齢人口の減少です。
総務省統計局『 統計ダッシュボード 人口ピラミッド』のデータによると、2020年の日本の人口は約1億2600万人、そのうち生産年齢にあたる15歳~64歳の人口は59.2%、7468万人ですが、2050年の日本の人口は約1億500万人、生産年齢人口は5500万人となり、2020年と比較して生産年齢人口が2000万人も減少してしまいます。
働き手の絶対数の減少が人材不足に繋がっており、将来的に人材不足は避けては通れない課題になるということが分かります。

出典:総務省統計局『 統計ダッシュボード 人口ピラミッド』を基に画像作成

岩手県の人口推移



さらに、地方では生産年齢人口の減少はより顕著なものとなります。
当社所在地の岩手県の人口推移を見てみましょう。

出典:「RESAS(地域経済分析システム)-人口対策-」を加工して作成



総務省『国勢調査』、国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口』を基に作成された『RESAS(地域経済分析システム)-人口対策-』で取得したデータによると、岩手県の2020年の人口は約121万人ですが、2045年には約88万人、27%減少すると予測、生産年齢人口も約66万人から約42万人へ36%減少すると予測されています。
経済活動の担い手である生産年齢人口の減少が、地方では特に深刻な状態にあることが分かります。

②就業人口の頭打ち


生産年齢人口の減少を補うために、高齢者や子育ての為一度仕事から離れた女性の再雇用が推進されてきましたが、中小企業庁より2024年5月に公開された『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要』によると、就業人口の頭打ちによる人材の供給制約に直面していると言われています。

出典:『労働力調査 基本集計(調査年:2023年)



総務省より公開されている『労働力調査 基本集計(調査年:2023年)』から上図就業率の推移を確認してみました。
特に65歳以上の就業率が2019年以降ほぼ横ばいになっており頭打ちであることが分かります。
生産年齢の女性の就業率は増加傾向にありますが、子育て世帯の女性就業率は子どものいない世帯よりも低い水準にあり、まだまだ環境整備が必要な状況が伺えます。
※参考:内閣府『第3章 女性の就業と出生を巡る課題と対応 第1節


③時間外労働の上限規制


中小企業の残業時間の上限規制が2020年4月から適用されました。
それまでは36協定を締結すれば上限規制なく時間外労働をさせることが可能でしたが、法改正により上限規制を守らなかった場合は罰則が適用されることになり、上限を超える時間外労働はできなくなりました。

出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制



法改正後の時間外労働上限

  • 年720時間以内
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月100時間未満(休日労働を含む)

月80時間は1日あたり平均4時間の残業に相当します。また、原則月45時間を超えることができるのは月6か月までです。

より良い働き方を推進していく上で残業時間に上限を設けることは非常に有効なことです。
しかし、中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要』によると、時間外労働の上限規制に伴い、雇用者一人当たり労働時間の減少が労働投入量を下押ししているというデータがあり、もともと人材不足で残業が常態化していた企業にとっては、残業が出来なくなった分を補う形で新たに人材を確保する必要が生まれ人材課題に拍車をかけました。

出典:中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要


④待遇の悪さ


大手企業と比較すると中小企業の待遇はどうしても劣っていると見られてしまいます。しかし、給与など簡単には改善できないものもありますが、人材不足を解消するには待遇の改善は有効です。

2023年5月に公開された株式会社帝国データバンク『企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート』から、『人手が不足している要因』と『人手が不足していない要因』のランキングが公開されています。
それぞれどんな要因があるか見てみましょう。

人手が不足している要因


出典:株式会社帝国データバンク『企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート



『人手が不足している要因』TOP3、第1位は『条件に見合った人材から応募がない』で54.6%、第2位は『業界の人気がない』で45.4%、第3位は『企業の知名度が低い』で42.2%でした。
中小企業では即戦力を求める傾向が強く、人材確保に苦難している状態にあることがうかがえます。
第4位、第5位には『労働環境が厳しいと受け止められる』、『賃金や賞与などに満足度が得られない』など待遇に関する理由がランクインしました。


人手が不足していない要因



反対に、大手企業や人材確保を課題と感じていないという企業では、働きやすい職場環境づくりや制度が出来ているという調査結果があります。
『人手が不足していない要因』TOP3は以下のようになりました。

出典:株式会社帝国データバンク『企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート



『人手が不足していない要因』TOP3、第1位は『賃金や賞与の引き上げ』で51.7%、第2位は『働きやすい職場環境づくり』で35.0%、第3位は『定年延長やシニアの再雇用』で31.2%でした。第2位にランクインした『働きやすい職場環境づくり』では、清潔保持や休憩スペース、社内相談窓口の設置など働きやすい空間を作ることが人材確保につながるという結果になりました。


『人手が不足している要因』では応募が来ない、業界の人気がない、企業の知名度がないなど採用に関する理由がTOP3にランクインしていましたが、『人手が不足していない要因』では賃金や職場環境づくりなど従業員への待遇を厚くすることで人材課題を克服したことがうかがえました。

3.対策 働きやすい環境づくり


前項で働きやすい職場環境を作ることが人材不足を解決することに役立つことをご紹介しました。
働きやすい環境を作る取り組みにはどのようなものがあるかご存知でしょうか。

①職場環境の整備


職場環境の整備とは、働く従業員を取り巻く環境を整えることを指します。
広義では人間関係なども職場環境に含まれます。


  • 物理的な環境
    オフィスレイアウト、照明、温度、騒音など、従業員が働きやすい物理的な環境を整えることで働きやすい空間を作ります。リラックスできる休憩室を作る、身体的に負担のかからないオフィス家具の導入などがあります。

  • オープンなコミュニケーションが可能な環境
    従業員が自分の意見やアイデアを自由に表明できる環境を作ります。上司や同僚とオープンなコミュニケーションを取ることができる状態を示します。

  • 心理的な健康
    ストレスや不安を軽減し、従業員の心理的な健康を支援する仕組みを整えます。メンタルヘルスのサポート、ストレスチェックやワークライフバランスの取り組みなどがあります。

  • チームワーク
    チームビルディングの活動や協力関係を促進するための取り組みを行います。これには、チームビルディングイベントや共有の目標設定、協力的なプロジェクト管理などが含まれます。

  • スキルと成長の促進
    従業員のスキルや成長を支援し、キャリアパスを提供します。トレーニングプログラムやキャリア開発の機会を提供することで、従業員のモチベーションと忠誠心を高めます。

 職場環境の整備の効果



職場環境を整備することは人材の確保につながると言えます。
中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要』から職場環境の整備の効果が示されています。

出典:中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要



全体数では多くの企業が職場環境の整備の取組を『ある程度行っている』と回答していました。
グラフを見ると、職場環境の整備を積極的に行っている企業ほど従業員数が増加傾向にあり、職場環境整備を『行っていない』回答した企業と比べ、『積極的に行っている』と回答した企業では『増加』の割合に2.5倍以上の差が生まれました。
職場環境の整備は人材の定着率の向上または採用に効果があることがうかがえました。

②人材育成の取組


職場環境の整備にも含まれていますが、人材育成の取組は人材の定着率の向上や生産性の向上に効果があると言えます。
中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要』に、人材育成の取組を増やした企業と増やしていない企業の定着率を比較したデータが公開されています。

出典:中小企業庁『2024年版中小企業白書・小規模企業白書概要



上図『中核人材・業務人材の定着状況(人材育成の取組増減別)』を見ると、人材育成の取組を増やしていない企業と比べ、増やした企業は『十分定着している』『ある程度定着している』と回答した割合が約8%程度多くなっていることが分かります。

また、定着率だけでなく生産性を上げることも人材不足解決の糸口になります。
人材育成の取組は生産性の向上や売上高の向上に効果があるというデータが中小企業庁『2024年版「中小企業白書」第2部 環境変化に対応する中小企業』から公開されています。

出典:中小企業庁『2024年版「中小企業白書」第2部 環境変化に対応する中小企業



人材育成の取り組みを増やした企業と増やしていない企業の割合はほぼ同率ですが、増やした企業の売上高の変化率は中央値と比較してプラス6.9%、増やしていない企業ではマイナス5.3%となりました。また、生産性も人材育成の取組を増やした企業は中央値と比較してプラス3.2%、増やしていない企業はマイナス1.5%となりました。
人材育成の取組は売上高や労働生産性の向上にも効果があるということが分かります。

4.GDXオフィスラボの取組


GDXオフィスラボでは働きやすいオフィス空間を作るために様々な取り組みを行っています。
今回はその中から特に社員に好評な休憩室をご紹介します。

 

リラックスできる休憩室

明るく開放的な空間をイメージした休憩室を作りました。
リラックスできるようアートやグリーンを多く配置し、鳥のさえずりや川のせせらぎなどの環境音も配信しています。
 家具も手触りの良い木製家具や、座り心地の良いサステナブルなチェアを使用し環境にも人にも配慮された空間になっています。
また、社員の健康にも配慮し血圧計を置いています。



5.まとめ


人口減少、就業人口の頭打ち、残業時間の上限規制、待遇の悪さなど様々な要因から中小企業の人材不足が生まれていることをご紹介しました。
これからますます人材確保の難しい時代に突入しますが、経営者として会社を守るためには人材課題に向き合わなければなりません。従業員の働く職場環境を整備すること、人材育成に力を入れることで定着率を向上させ、生産性を上げることにも寄与します。
具体的にどう取り組んでいくかは難しい問題ですが、従業員に楽しく仕事をしてもらえる環境、働きたくなる会社がどんなものか一緒に考えていきませんか。

GDXオフィスラボでは働く職場環境や過ごしやすいオフィス空間づくりに関するご相談や、人材採用、育成に関するご相談を受け付けています。
是非お気軽にお問合せ下さいませ。

ライター紹介
■株式会社アベヤス 佐々木 葵

農業機械業界、移動体通信業界を経て2024年に株式会社アベヤスに入社しました!
広報歴は合計3年程になります。
ゆるキャラの中の人としてSNSを運用したり、社内報を作っておりました。
GDXオフィスラボからオフィスの空間づくりに役立つ情報をどんどん発信してまいります!


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